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ビジネスのフランチャイズ化

既存事業のフランチャイズ化:推奨価格と加盟店の価格決定権の設計

直営店の統一価格を、そのまま加盟店に義務付けていませんか。推奨価格の伝え方、値引き判断、価格設定システムを整理し、独占禁止法に配慮した運用を設計します。

公開日 2026/11/7

既存事業のフランチャイズ化:推奨価格と加盟店の価格決定権の設計

既存事業をフランチャイズ化するとき、直営店で使っている価格表を、そのまま加盟店の義務にしてしまいがちです。しかし、加盟店は本部とは独立した事業者です。健全なフランチャイズ・コミュニティを築くには、ブランドとして提案する価格と、加盟店が自ら判断する販売価格を区別し、契約だけでなく日々の運用にも反映させる必要があります。

1. 統一価格を前提にする前に、法律上の位置付けを確認する

日本には、フランチャイズだけを包括的に規律する単独の法律はありません。契約の基本には民法が適用され、本部と加盟店の取引には独占禁止法が適用されます。また、中小小売商業振興法第11条は、同法の特定連鎖化事業に該当する本部に、契約締結前の書面交付と説明を義務付けています。

価格ルールの設計で特に重要なのが、公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」です。これは法律そのものではなく、加盟募集や契約後の取引について、独占禁止法上の考え方を示す指針です。

加盟店の販売価格を拘束する行為は、取引の内容により、独占禁止法第2条第9項第4号の再販売価格の拘束や、不公正な取引方法の一般指定第12項の拘束条件付取引に該当する場合があります。取引上の優越した地位を利用して不当な不利益を与えれば、優越的地位の濫用の問題も生じ得ます。

したがって、「同じ看板だから同じ価格が当然」「契約に署名があるから問題ない」という整理は避けます。商品の再販売か、加盟店で調理・提供するものかなど、取引実態によって検討点が異なるため、強制的な価格条件を設けたい場合は、採用前に競争法に詳しい弁護士へ確認しましょう。

2. 直営店の価格業務を分解し、加盟店の判断範囲を明確にする

まず、既存事業で行っている価格決定を一覧にします。通常価格だけでなく、時間帯別の値引き、セット販売、会員割引、期間限定企画なども対象です。直営店では本部の指示で済んでいた作業を、加盟店に対しても同じように指示できるとは限りません。

価格ごとに、次の項目を整理すると、契約と運用の境界が見えます。

  • 本部が提供する情報:推奨価格、原価計算の前提、直営店での販売実績。
  • 加盟店が判断する事項:実際の販売価格、値引きの実施、地域の事情に応じた見直し。
  • 表示を更新する担当者:店頭メニュー、販売時点情報管理システム、予約画面などの変更担当。
  • 相談が必要な事項:広告との表示不一致や、システム上の設定方法。

推奨価格には、設定の根拠と前提条件を添えます。例えば、直営店の家賃や人件費を前提にした価格であれば、それが加盟店にもそのまま当てはまるとは限らないことを説明します。推奨価格は利益の保証ではなく、検討材料として扱います。

また、価格変更の「連絡」と「承認」を区別してください。表示更新のための連絡手続が、実際には本部の承認がなければ価格を変えられない仕組みになっていないかを確認します。書面に「自由」と書くだけでは、実態としての拘束は解消されません。

3. 推奨価格を強制に変えてしまう運用をなくす

価格決定権は、契約書よりも現場の仕組みに左右されることがあります。例えば、加盟店側で価格を変更できない販売システム、本部担当者による繰り返しの値戻し要求、推奨価格から外れた店舗だけへの支援停止は、実質的な拘束につながるおそれがあります。

加盟募集を始める前に、既存店舗の設備を使い、加盟店の立場で価格変更を試してください。確認すべきなのは、変更機能の有無だけではありません。申請後に誰が判断するのか、反映まで営業に支障がないか、ウェブ上の価格と店頭価格を整合させられるかまで確認します。

マニュアルと担当者向けの説明には、少なくとも次の方針を反映させます。

  • 推奨価格と異なることだけを理由に、契約違反として扱わない。
  • 価格相談では、根拠となる情報を示し、加盟店の判断を尊重する。
  • 価格の変更履歴は表示管理などの目的で記録し、価格遵守の順位付けに使わない。
  • 値引きに対する苦情が他店から届いても、直ちに価格の引上げを要求しない。

加盟店同士で将来の価格や値引き方針を申し合わせることにも、競争法上のリスクがあります。本部が店舗別の価格情報を集める場合は利用目的を明確にし、加盟店会議を価格統一の場にしない配慮が必要です。

4. 販促企画と募集説明でも、価格の選択肢を守る

期間限定の販促企画は、通常価格と別に設計します。「全国一律価格」として先に広告を作ると、後から加盟店に参加を迫る構造になりかねません。価格を伴う企画では、広告制作の前に参加方法と費用負担を整理します。

実務上は、企画書に対象商品、実施期間、提案価格、参加の選択方法、値引き原資の負担者、表示更新の担当をまとめると便利です。不参加店舗の扱いも明確にし、対象店舗が限定される場合は、その範囲が消費者に伝わる表示にします。参加を任意とするだけで、あらゆる競争法上の問題がなくなるわけではない点にも注意してください。

加盟募集時には、通常価格と販促価格を誰が決めるのか、価格変更にどのような実務が伴うのかを説明します。特定連鎖化事業に該当する場合は法定開示事項との関係を確認し、該当しない場合でも、経営判断に影響する価格条件は事前に書面で示すことが重要です。

最後に、契約書の表現、システム設定、本部担当者の説明が一致しているかを点検します。「推奨」と記載しながら、営業担当者が「必ず守る価格」と説明していれば、適切な設計とはいえません。

実践の要点: 加盟募集前に、一つの商品で「加盟店が推奨価格と異なる価格を選ぶ場面」を試してください。契約、画面操作、広告表示、本部の対応まで無理なくつながるかを確かめることが、価格決定権を実際に守る第一歩です。

出典

  • 特定連鎖化事業(フランチャイズ)について | 中小企業庁 - 経済産業省
  • フランチャイズ・システムと 独占禁止法
  • Japan Franchise & Licensing Contributor City-Yuwa Partners
  • フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方
  • フランチャイジーの労働者性
  • [PDF] フランチャイズ契約を締結する前に 事業や契約内容について確認 ...
  • In review: key franchise laws in Japan
  • フランチャイズビジネス関連法令について

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