既存事業のフランチャイズ化:特定連鎖化事業の該当性を確認する方法
「ライセンス契約」という名称でも、特定連鎖化事業に該当する場合があります。既存事業をフランチャイズ化する前に、六つの要件と取引の実態を照合する手順を解説します。
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既存事業をフランチャイズ化するとき、最初に確認したいのは、予定する仕組みにどの法律が適用されるかです。「加盟店」ではなく「認定店」と呼んでも、契約の名称だけで法的な扱いは決まりません。健全なフランチャイズ・コミュニティをつくるために、募集開始前に取引の構造を整理し、中小小売商業振興法上の「特定連鎖化事業」に当たるかを確認しましょう。
1. 契約書より先に、事業の関係図をつくる
日本には、フランチャイズ全般を包括的に規律する単独の法律や、本部・加盟店に一律に求められるフランチャイズ固有の登録制度はありません。一方で、一定の仕組みには中小小売商業振興法が適用され、契約関係には民法、本部と加盟店の取引には独占禁止法などが関係します。「登録が不要だから、法的な準備も不要」と考えないことが重要です。
まず、本部、加盟予定者、仕入先、顧客の関係を一枚にまとめます。誰が誰に商品を販売し、誰が代金を受け取り、誰が運営方法を指導するのかを矢印で示してください。商品が本部を経由せず仕入先から店舗へ直送される場合も、本部が販売をあっせんしている可能性があります。物流だけでなく、発注、契約、請求の流れも確認します。
そのうえで、次の資料を用意します。
- 加盟契約書案と、付随する商品供給・指導の契約書案
- 加盟時と開業後に受け取る金銭の一覧
- 商標、商号、看板などの使用条件
- 商品供給と経営指導の具体的な内容
- 想定する加盟者の事業内容と規模
資料がまだない項目は、単なる書類不足ではなく、仕組みが未確定である可能性があります。「本部が適宜支援する」といった表現を、実際に誰が何をするのかまで具体化しましょう。
2. 六つの要件を、根拠資料と照合する
中小企業庁は、次の六つの要件に当てはまる場合、特定連鎖化事業と判断されると説明しています。確認表には、各項目の判断だけでなく、その根拠となる契約条項や取引資料を記載します。
① 主として中小小売商業者を加盟店とすること。 直営店の事業内容ではなく、これから加盟する事業者について確認します。飲食店も対象になり得ます。「サービス中心の店だから対象外」と早合点せず、加盟者が何を販売するのかを整理してください。
② 定型的な約款による契約に基づいて行うこと。 共通の契約条件で加盟者を募る予定かを確認します。加盟者ごとに賃料や開業日が異なることだけで、定型的な約款ではないと判断しないようにします。
③ 継続的に商品を販売し、又は販売をあっせんすること。 本部からの直接販売だけが対象ではありません。仕入先を通じた取引についても、本部の関与を確認します。開業時の設備販売と、開業後も続く商品供給は分けて整理すると、判断材料が明確になります。
④ 継続的に経営に関する指導を行うこと。 開業前の研修だけでなく、開業後の店舗訪問、経営相談、売上分析などを洗い出します。それぞれについて、契約で約束する内容と実際に提供する内容を照合します。
⑤ 特定の商標、商号その他の表示を使用させる定めがあること。 店舗名だけでなく、看板、包装、予約画面などで共通の表示を使う予定も整理します。単にブランドを紹介するのか、加盟者自身の営業上の表示として使わせるのかを区別してください。
⑥ 加盟に際し、加盟金、保証金その他の金銭を徴収する定めがあること。 名称を「認定料」や「導入費」に変更すれば対象外になるとは限りません。何のために、いつ、いくら受け取るのかを確認します。
これは六項目を数えて点数を出す作業ではありません。不明点があれば推測で埋めず、契約案と関係図を示して、日本のフランチャイズ契約に詳しい弁護士に確認しましょう。
3. 呼び方や契約の分割による誤判断を防ぐ
中小企業庁は、ボランタリーチェーンや特約店取引でも、六要件に当てはまれば特定連鎖化事業になると説明しています。したがって、「フランチャイズ契約ではなくライセンス契約」という説明だけでは、適用の有無を判断できません。
例えば、共通ブランドを使う飲食店に対し、定型的な契約に基づいて原材料を継続供給し、経営指導を行い、加盟時に金銭を受け取る計画なら、六要件を具体的に確認する必要があります。逆に、小売・飲食の事業であっても、商品供給が契約の条件となっていないなど、六要件に当てはまらない場合は特定連鎖化事業には該当しません。
注意したいのは、ブランド使用、商品供給、指導を別々の契約書に分ける場合です。書類を分割した事実だけで結論を出さず、複数の契約がどのようにつながり、一体として何を約束しているかを確認してください。
該当性を避けるために表現だけを変えるのではなく、実態に合った法的な整理をすることが大切です。判断記録には「対象外」とだけ書かず、どの要件を満たさないと考えたのか、その理由と確認日を残します。
4. 判定結果を募集準備と見直しにつなげる
特定連鎖化事業に該当する場合、中小小売商業振興法第11条により、本部事業者は、加盟しようとする者に対して、契約締結前に事業概要や契約の主な内容などを記載した書面を交付し、説明する義務を負います。具体的な開示項目は、同法の施行規則も確認して準備します。
該当しない場合でも、「重要な条件を説明しなくてよい」という意味ではありません。公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」は、小売・飲食に限らず、幅広いフランチャイズの取引を対象とします。これは独立した登録法ではなく、独占禁止法の適用に関する考え方を示したものです。
同ガイドラインは、加盟希望者の判断に必要な事項の開示が重要であるとしています。また、契約後も、本部が優越した地位を利用して加盟者に不当に不利益を与える行為などは、独占禁止法上の問題になり得ます。加盟者は本部の支店ではなく、独立した事業者だからです。
最後に、該当性の確認を一度限りの作業にしないでください。新たな商品供給、加盟時費用の導入、ブランド使用条件の変更などを行う際は、六要件への影響も再確認します。担当者、確認日、判断根拠、次に見直す条件を一緒に管理すると、変更時の見落としを防げます。
実務の要点: 募集資料をつくる前に、取引の関係図と六要件の確認表を完成させましょう。名称ではなく仕組みを確認することが、フランチャイズ・コミュニティの信頼を支える出発点です。



